中国で駐在員

30代男、未婚、2016年から中国駐在(企業派遣)

「駐在制度」って中国(外国)企業にもあるの?

 ネットではよく、「駐在員は日本企業特有」とか「紙切れ(辞令)一枚で本部の有能な人材を人気の無い地方都市に送ることができる」、「究極の社畜向け制度」なんて言われています。

 

 中国を主とした外国の企業では海外に社員を派遣する「駐在員」というものが存在するのか、どんな風に見られているのかについて書いていきたいと思います。

 

駐在員という制度を中国人はどう思うか

  一般的に、日本企業が海外に送り出す「駐在員」は、終身雇用を前提とした長いキャリアのワンステップとして存在します。つまり、この先もずっと雇用してあげるから一時の不便にも耐えてね、というものです。

 

 駐在がその人にとって「不便」であるかどうかは人の考え方や好みにもよるので、私のように元々海外に行ってみたい!と思っていた人間にとっては、前回までの記事に書いたような駐在員が受けられる手当とか恩恵は素晴らしいものです。

 

 ですが、遠方に飛ばされる、ましてや言葉や文化の異なる外国に飛ばされるというのは、その覚悟が無かった人にとっては一種の苦痛なのです。

 

 この、「遠方に行く」ということが「苦痛」という感覚は、実は多くの中国人にもあることなのです。

 

「雇用関係」に対してシビアな中国人

 中国社会(中国企業)の雇用関係は俗に言う「欧米社会」のそれに近いと感じます。つまり、個々の人材の能力に着目して職務を割り当てる雇用です(ジョブ型と呼ばれるそうですね)。

 

 日本企業では往々にして、「総合職」とか「一般職」とかいう採用のされ方(メンバーシップ型)で、正直、何が自分の職務範囲なのかいつまでもわからないまま働き続けます。

 

 中国企業では、個々の社員が自分の専門分野というのを意識しています。そのため、「これは自分の仕事」「これは自分の仕事じゃない」というシビアな隅わけをしており、一般的には、効率がよくなります(面倒で誰も拾わない仕事が発生してきて、サービスの質の低下に繋がることも否めないのですが)。

 

 したがって、彼らが働く勤務地についても、面接時や契約時に合意した場所が原則ということになります。

 

 いきなり(多少時間を置いたとしても)海外や遠方に行けと言われたら、大抵の中国人は断ります。「どうして(住む場所という)自分の人生の重大な要素まで会社に命令されなきゃならないんだ」と、そう考えます。

 

中国人は親元を離れるのがとにかく嫌い

 加えて、中国人は男も女も実はかなりのマザコンファザコンです。もう本当にすごいです。親元から離れることに対して、相当な拒絶反応を示します。

 恋愛でも仕事でも、相当な割合(感覚的に8割くらい)が、「お父さんお母さんと離れたくない」という理由で、目の前にあるいい条件を諦めたりします。

 

積極的に海外に行く中国人はどういう人?

 「でも、中国人は世界中に住み着いてビジネスしているじゃないか。俺が住んでいる街にだって中国マッサージや中国料理があふれているぞ!」という声が聞こえてきそうですが、彼らは「駐在員」ではなく、「移民」のような存在です。

 海外(途上国)に住み着き、自分で店を開くなど自営的な働き方をしている人は確かに非常に多いのですが、彼らは大抵、学の無い人たちで、中国国内で暮らしていくことに限界を感じた人たちです。

 

 中国は日本よりも学歴を気にする社会なので、大学(現在は大学院も標準的な学位になってしまいました)を卒業しないと一般企業に入るのは難しく、かといって国内の飲食店経営や小売店経営は飽和しているので、どうしようもなく海外で開店するのです。

 彼らはビジネスが軌道に乗ると親や親戚を呼び寄せます。元々、コミュニティに頼るという考え方の無い民族性ですので、中国で家族が孤独であろうが、海外で家族が孤独であろうが、どちらも同じなのです。

 

中国(外国)企業にも駐在員の制度あるのか

 単刀直入に言えば、YESです。日本にも「駐在員として働いている中国人」がたくさんいます。

 ですが彼らは元々「勤務地は○○」という採用のされ方をしており、そこに行く前提で雇われています。その為、中国の企業では一般的に、日本人とコミュニケーションを取る必要があるにも拘らず日本語が出来ない人間を日本に送って、まずは勉強させるとか、社会に慣れさせるとか、そういう「投資的駐在」は聞いたことがありません。

 

駐在制度は投資

 僕が中国で駐在し初めて知ったのは、色んな理由で海外に暮らしている人っていっぱいいるんだなあ、駐在員以外にも海外で仕事する人っていっぱいいるんだあ、ということです。

 

 ぶっちゃけ、自分の意思で中国に来ている人の方が中国語出来ますし、社会にも溶け込んでるし、モチベーションも高いです。がむしゃらです。

 

 彼らを現地で直接雇用しないで、本社の人員を高いコストかけて現地に送る日本企業のやり方は、「投資」なんだと思います。その社員の経験が将来的に本社に還元されうる期待があるのでしょう。これもやはり、終身雇用を前提とした考え方ですね。

 

 他方、働き方が多様化している昨今、このかんがえは「甘い」ような気がします。その個人がいつまでも奴隷のように会社に貢献し続けてくれる保障なんて、どこにもないような気がします。