中国で駐在員

30代男、未婚、2016年から中国駐在(企業派遣)

中国語習得から得られる「儲け」は小さい?

 

中国広州で駐在員3年目のカンクローです。

 

 前回から、(中国や多くの途上国における)駐在員にどれほどの「語学力」が必要か、という点を書いてきました。

 結論から言うと、ほとんど必要ないのですが、それはなぜなのか、もっと細かいことを書いていこうと思います。

 

前回の記事(海外駐在員は英語ができなくてもOK? - 中国で駐在員)では、

①海外支社には日本語ができる多くの現地人社員がいる、

中国企業の取引先にも日本語ができる社員がいる、

という二つの理由を書きました。

 

中国ビジネスには構造的に中国語・英語が必要ない(経済的優位性)

 ちょっと僕自身の持論もありますが、今後も中国、多くの東南アジアに進出している大企業の駐在員は現地語や英語はたいして必要ない、ほとんど必要ない状況が続くと思います。

 それは、アジアの市場においては、やはり経済的に日本が優位に立っているからです。

 

 どういうことかというと、みなさんは、アジアの人々が日本やシンガポールに出稼ぎに来て、辛い環境に耐えながらもがんばる、という話を聞いたことがあるのではないでしょうか。彼らはなぜ頑張れるのか。単刀直入に言えば、本国よりも効率的に金稼ぎができるからです。

 

 一人当たりの所得が高い国にかかわっている方が、得られる収入は高くなっていきます。例えば、中国の上海や北京、広州などの大都市でさえも、大卒後の初任給で得られるのは8~10万円程度です。30歳になっても、多い人、エリートの部類で20万円くらいです。それが、日本に行けば、週5でコンビニアルバイトをしていてもそれ以上もらえますよね。

 

 日本人である、または日本人と対等に(日本人のように)働けるというだけで、彼らの給料は上がっていくのです。これは、彼らにとって日本語を学ぶ大きなモチベーションになります。

 

 他方で、我々が中国に来て中国人のように働いたとしても、先にも言った通り、月に10万円くらいしかもらえないのでは、あまり意味は無いですよね。日本でコンビニ店員している方が平和です。

 

中国ビジネスには構造的に中国語・英語が必要ない(費用対効果)

もう一つ、似たような観点かもしれませんが、「費用対効果」という観点からも、日本人が中国語を学ぶ理由は低くなります。

 

どういうことかというと、月収10万円の中国人と月収25万円の日本人がいたとします。この二人がそれぞれが同じ時間(1000時間としましょうか)だけ語学を勉強し、語学を習得し、同じ能力を持ったとします。

日本語のできる中国人は、1000時間の勉強で月収が35万円になりました。25万円アップ!3.5倍です。

他方、中国語のできる日本人は、1000時間の勉強で月収が35万円になりました。10万円アップ!約1.4倍です。

 

同じ時間をかけて勉強しても、日本人に得られることはあまり多くないのです。

 

中国ビジネスには構造的に中国語・英語が必要ない(希少性)

 「中国人はいっぱいいる」という観点からも、我々が中国語を勉強しなくていい理由が導き出せます。

 嘘か本当かわかりませんが、チベット人ウイグル人、その他よくわからない農村の人々も併せて、中国人は14億人ほどいると言われています。彼らは中国語を話せるのが当たり前の社会で生きなければいけません。「中国語が話せる」というのは珍しいことでも何でもないのです。

 

 14億の人間が「中国」という国の経済のパイを分け合っているわけです。当然、一人当たりの取り分は少なくなります。それが一人当たりGDPということになるわけで、中国はまだ100万円(9000ドル)ほどです。

 

 つまり、我々が中国語を勉強して中国の市場で活躍できる人間になったとしても、その市場から自分に回ってくるパイの大きさの平均が100万円くらいなわけです。②の、費用対効果の話と似ていますね。

 

 「日本語ができる中国人」は山のようにいますので、我々が中国社会で「平均並みに」稼げるかすら怪しいです。つまり、日本語・中国語が両方できる、という希少性は小さいのです。

 

全く必要ないかというと、そういうわけでもない

 僕は始めから、「たいして必要ない、ほとんど必要ない」という言葉を使ってきました。上に上げた状況は今後もしばらく変わらないと言えども、いくらか、中国語を学ぶ意味はあると言えます。

 

 一つは、中国人がとても縁故や雰囲気を重視する人間性であることです。これは、日本人とも少し似ていますが、やはり、自分と同じ言語を喋れる、飲み会で盛り上がれる、お世辞が言えるというのは、ビジネスにおいて重要です。

 

 文化や習慣の違う欧米人が中国語を勉強しても、日本人と中国人のコミュニケーションのレベルには達しません。アジア人特有の、コミュニケーションがより多くの金を生み出すことになるかもしれません。

 

 また、中国は格差社会です。一部のエリートや官僚(共産党につながる人々)が、莫大な資産や権力を持っています。その人たちに近寄るだけで、先ほどまで言っていた中国人の平均的な富の何倍もの儲けが得られる可能性があります。

 

 つまり、中国人は日本語を勉強し日本人コミュニティにとりあえず入るだけでいいのに対し、日本人は、中国語を勉強し、付き合う人を選んで成功すれば、より儲かるかもしれない、というわけです。

 ただ、「中国語ができる日本人」の活躍の場所も「日本語ができる中国人」たちにすでに奪われてしまっていることも、お忘れなく。

 

 この点、日本は格差の小さい社会ですから、中国人が日本語を学んだところで、一攫千金のチャンスは少ないでしょう。

 

 中国にいるとわかるのですが、日本語を勉強する人たちの大半が安定を求めています。つまり、日本人と同様、普通に、平均的に暮らしていくことを求めているのです。

 

最後、語学力が必要か、という点からは少し離れてしまったかもしれませんが、結局「会社員」でしかない日本人駐在員にとっては、そんなリスキーなビジネスに関わるチャンスもなく、大抵が、日本社会の枠組みで作業を処理していくだけのビジネスであるので、日本語のできる中国人と組めば、お互いにウィンウィンなわけです。

 

 僕がこの観点を早く持っていたら、中国で仕事するためだったとしても、今から「中国語」、やらないですね。日本語のできる中国人を雇った方が早いです。