中国で駐在員

30代男、未婚、2016年から中国駐在(企業派遣)

現地採用ってどうなの?―中国で出会った現地採用日本人に聞いてみた―

中国で駐在5年目のカンクローです。

 

最近、「現地採用」としてこちらに来られている日本人にお会いしたので、その方から聞いたこと等について、本人に害が及ばない程度に書いてみたいと思います。

 

30代、一念発起して現地採用で海外に挑戦

その方は現在30代半ばの男性です。

もともと日本の会社でサラリーマンをやっていたそうなのですが(聞けばそれなりの大手企業)、昔から「海外に行ってみたい」という漠然とした理想があったらしく、退職して海外転職のウェブサイト等を活用して現地採用として中国に来たとのこと。

 

中国語は全く話せないようなのですが、日本にいた時の仕事でもともと英語を使ったり、日本では資格等が必要な特殊スキルでサラリーマンをしていた関係から、こっちでも引き続き関連業種で英語を使ってその仕事をしているようです。

 

彼の具体的な業務内容は書きませんが、法制度や慣習の異なる海外でも活用できるフィールドのある特殊技能というのは、なかなか魅力的ですね。それが生かせることで、彼にとって長年の目標であった海外勤務という環境にたどり着けたわけですから、いいことなのでしょう。

 

現地採用日本人の給与

皆さんも気になる彼の待遇について簡単にご紹介します。

一般的に、日本人が海外に「駐在」として派遣されるといろいろな手当が加算されて、日本でサラリーマンをしていた時よりも給与や生活水準が高くなることが多いです。貯金もできるようになります。私が困ることと言えば、「歯医者に行くのが怖い」くらいでしょうか。

 

海外駐在員の暮らしについては、簡単に紹介した記事がありますので、こちらも参考にしてみてください。

海外駐在員はどんな生活をしているのか①(大企業編) - 中国で駐在員

海外駐在員はどんな生活をしているか②(大企業編) - 中国で駐在員

 

彼の職場(会社)には日本から駐在で来ている日本人社員と、現地採用の日本人社員と、中国人社員がいるそうです。その中で、給料的な意味での待遇を単純に比較すると、

駐在日本人(100) > 現地採用日本人(70~90) ≧ 現地中国人(40~80)

という感じだそうです。

 

駐在日本人と現地採用日本人の間では、まず給料が異なるらしく、彼の例で言えば駐在日本人よりも税込みで20%程低いとのことです。

 

それでも、やはり日本語ができて、日本社会(会社)文化の中で働ける、本社との仲介役にもなれるというプライオリティがあり、日本語が話せる同世代の中国人よりも多少は給与が高いようです。

 

とはいっても、現地(中国)にも年次の高い方や、長く勤めておられて役職のある方、能力の高い方がいるので、その方の給与は当然彼より高くなります。(余談ですが、駐在日本人の場合、若手であってもベテラン中国人より給与が高いことが多いようです。)

 

特殊な例として、現地採用でも長期にわたりその現地子会社に貢献しているベテラン日本人は、駐在日本人よりも給料高くなるようです。しかし、その場合も以下に書く「手当」分を補うのは難しいでしょう。

 

現地採用日本人の保険

また、見過ごせないのが、健康保険等の各種税制面でのサポート。

例えば駐在日本人は日本の企業に雇用されていながら海外で働いているという身分ですので、日本で年金や社会保険料を納め、当地で通院等が必要になったときに支払う医療費を賄う海外保険についても日本企業側が賄うなど整備されています。

 

彼は日本側の本社とは雇用関係に無く、中国側の子会社に中国の法制度に則って雇われていますので、日本の年金等は自分で納めなければならないようです。医療保険については中国側の企業が社員への福利厚生として完備しているとのことでした。

 

つまり、現地採用で提示された給与が仮に1万元だとして、そこから中国での各種税が引かれると同時に、日本に帰ったときに困らないような社会保険分を貯蓄しておかなければならないと言うことです。

 

現地採用日本人の各種手当

駐在日本人との間でさらに格差が生まれやすいのは住居手当や海外勤務手当です。

 

駐在日本人であれば、ほとんどの場合に住居手当が満額もしくは大部分支給されると聞きます。私の会社では「大部分」です。これにより、現地中国人にとっては一部の金持ちしか住めないような一等地の高級マンションに、日本の都会でワンルームを借りるくらいの費用で済めてしまいます。

 

住居費は「実質タダ」になり、浮いた分のお金で日本で買った自宅のローンを払い続けることもできるんじゃないかな、と思うほどです。多少、テクニックっぽい話になりますが、このことも以前記事に書いてみました。

海外駐在員こそ家を買うべき - 中国で駐在員

 

さて、住宅手当が無いその現地採用の方は、自分の所得から一月7000元ほどのマンション一室を借りているとのことでした。日本円で10万円程度ですので、中国でも、それなりの給与をもらっていれば対応できる金額ですが、現地中国人は家族持ちであっても月に7000元も払ってマンションを借りている人には会ったことがありません。

 

一月5000元を超えるようなマンションはもともと、家賃補助があるような外国人駐在員に貸し出すことを前提として設定された賃貸物件ですので、現地人はほぼ借りません。

 

また、現地採用日本人には当然、「海外勤務手当」というものがありません。なぜなら、現地で採用されているのだから、「海外に行ってもらって不便をおかけしますね、この手当で不便な分を補ってくださいね」という手当が必要ないというわけです。

 

現地採用日本人が海外でもらう給与は、海外勤務手当が無いことも多少加味された金額になっているとは思われますが、それでも、駐在日本人と比べると数十%の差になります。

以上が、彼が私に酒を飲みながら語ってくれた現地採用日本人の労働環境でした。

 

海外に来たのは目先の利益の為じゃない

そんな彼が、なぜ日本の安定した職場を捨てて、自身にとって悪い方に待遇格差のある現地採用の世界に飛び込んできたかというと、ひとえに、「今海外に行きたかったから」というものと「今後この経験が何かの役に立つと思うから」ということでした。

 

確かに、「今海外に行きたい!」と考える人は、日本の職場でいつ自分に回ってくるかもわからない海外赴任のチャンスを待ち続けて老いていくよりも、このタイミングで自分の好きな場所に行けるというのは大きいかもしれません。

 

ただ、後者の、「何かの役に立つ経験」というのは多少疑問です。

中国語が話せない中で中国語圏に来て英語で仕事をすることは、ネイティブじゃない中国人に囲まれる中で、あまり意味のある事とは思えません。

せいぜい、中国人と関わる中で中国人に対するイメージが変わるという程度でしょう。まあ、中国のパワーが今後も増していくだとうと考えれば、国際人になるためには必要な技能かもしれませんけどね。

 

以上、少し珍しい現地採用の方とのコミュニケーション記録でした。