海外駐在員はもういらない?ー現地化する海外法人ー
中国で駐在員6年目のカンクローです。
最近、日本人が海外駐在する制度を見直して、現地人のみでマネジメントしようという企業が多く見られると感じます。この流れは今後加速することはあっても、逆行することはない、すなわち、日本人駐在員をまた増やしていく流れには戻らないと考えられます。
今回はそのことについて自分の考えを書いてみたいと思います。
これまでこのブログでは、駐在員がいかに「おいしい」制度かと言うことをいろんな角度から説明してきました。
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海外駐在がFIREへの近道である4つの理由 - 中国で駐在員
こんな風に、数々のメリットがある駐在員の制度が無くなってしまうかもしれないというのは、海外志向の学生や社会人にとっては残念なことですよね。
ですが、想像してみてください。外資系と呼ばれる企業では、日本法人の代表が日本人であることが多いですよね。彼らは日本の市場で会社のサービスをどう売り込むか、日本の企業とどのように協力していくかをその任務にしています。
そのような中で、日本の労働環境や市場についてよくわからない、日本人とコミュニケーションが取れない外国人は十分にその能力を発揮できるでしょうか。
それと同じことが、日本企業の海外法人についても今一度考えられるようになってきているのです。
一昔前までは高コストの「駐在員」に意味があった
これまで、製造業を中心に大きな成長を遂げ、日本の経済力を世界第二位までに押し上げる原動力となってきた日本企業のやり方は、世界の他の企業の追随を許さないほどに優秀なものでした。
そのため、日本企業のやり方を熟知している日本人が、自分たちのやり方を海外の現地に根付かせることがビジネス成功において最重要のことだと考えられてきたのでしょう。
しかし、現代社会はテクノロジーの進歩が目覚ましく、また単に「良いものを作れば作っただけ売れる」という時代でもなくなってきました。価値観の多様化とともに、「良いもの」の定義が複雑化し、50代、60代近い組織のトップが考え付いた製品やサービスが受け入れられなくなったと言うことなのかもしれません。
私が駐在している中国某都市では、大手総合商社、大手メーカー、メガバンクも含めて、海外支社の代表から末端まで、すべての従業員が現地人という体制もよく見られます。構成員の多くは日本語を解し、日本にある本社との連絡に支障はないという前提の下、もはや、日本人がここに出てきて、ビジネスのかじ取りをする必要は無いのかな、と感じられます。
高コストは社員の私腹を肥やしているだけかもしれない
最初に述べた、「駐在員制度はおいしい」という話ですが、そのおいしさを提供しているのが企業です。ひとたび日本人駐在員を現地に送るとなれば、その渡航費を準備しなければならない他、長期的な滞在費の補助、帯同する家族へのサポート、そのための専属秘書のような現地職員も新たに必要となってくるでしょう。
現地人の優秀な社員であれば100の費用で済むところを、「日本人の方が安心だから」「なんとなくコミュニケーションが円滑だろうから」などと言って、中年の日本人社員を派遣すると300も500もの費用が掛かってくるわけです。これでは国際競争には勝てません。
ましてや、その費用をかけたからといって、必ずしも成果が上がるというわけでもないです。
余談ですが、私が駐在している中国では、昔からある伝統的な国有企業と呼ばれる大企業(公務員と似たようなものです)の幹部を除き、企業の経営者はみな日本よりも一回りも二回りも若い場合が多いです。
それにより中国初の新たなサービスが世界を席巻するほどに急速に拡大しているとも言えます。
駐在員のハードルはより高くなる
今後は、駐在員として求められるスキルはより現実的な、高いものになっていくと考えられます。つまり、現地語の語学力があり、ある程度生活環境のハンディをものともしないようなバイタリティがあり、現地人と一緒に実績を上げられるような、そんな人材が求められていくでしょう。
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