中国で駐在員

30代男、未婚、2016年から中国駐在(企業派遣)

総務省幹部と企業の会食問題―理想主義に首を絞められる日本経済―

中国で駐在5年目のカンクローです。

 

総務省幹部がマスメディア関係者などと数万円~数十万英程度の会食をしたことが、日本で大問題(?)になっているようです。菅総理の息子さんも絡んで、野党にとっては批判の格好の材料になっていますね。

 

これについて、中国人ビジネスマンからは、呆れともとれるような意見が聞こえてきます。

 

日本社会は理想を唱えすぎ

中国の政治体制や経済は、独裁だとか、一部の人に牛耳られているとか、格差がひどいというのは、その通りだと思います。政治家はそもそもすべてをコントロールできるようになっていますし、企業家は、社会的地位や人間関係や資本力を駆使して、蓄財ができるようにうまくやっています。

 

中国では、企業関係者にとって権力を掌握している政治家と仲良くしたり、おべっかを使って便宜を図ってもらうのは当たり前のことです。

 

たとえば、ある地区で大なり小なり工場を営んでいる経営者からすれば、商業部門を管轄する政府や、環境規制などを管轄する政府、具体的な取り締まりを行う警察と普段から仲良くしておくことは、突然の制度変更の際に数か月間猶予を設けてもらうとか、環境対策が基準を満たしていないときに多めに見てもらうとか、そもそも自分のところに調べに来ないでもらうとか、いろんな部分で重要です。

 

これを、無法地帯だとか、人治主義であるとか、一部の人たちだけの特権になり不公平だ、という意見も分かります。他方で、中国人たちは、「こんなのは当たり前なのであって、向上心の無い民衆の意見のためにこのような不正ビジネス一つ一つつぶしていくことに力を使うより、自分がどうのし上がるかを考える方がより生産的」と考えます。

 

日本の現状に目を向けてみれば、政府や企業関係者が癒着すること、裏で何か大きな金が動いていることは、たまにメディアに見つかって大騒ぎになりますが、氷山の一角にすぎず、見つかっていないことの方がたくさんある、と考えられるのではないでしょうか。

 

国会における与野党の議論も、単に理想を語るパフォーマンスになっているだけと言えます。

 

中国人は、数万円の会食なんて何でもないこと、そんなことに神経をとがらせて莫大なビジネスが阻害されるなら、それこそ国民にとっての不利益になる、とさえ考えるようです。

 

民主主義の費用

「民主主義には金がかかる」というのは、僕が会社の先輩から聞いた言葉の中で一番心に残っているワードです。

 

誰もが、政治や経済には「黒い部分がある」というのは、心の中ではわかっていることだと思います。

 

頭の悪い芸能人・タレントが政党に担ぎ上げられ、官僚たちの上に立つ議員に当選する。

 

一般市民の支持を得られない高齢政治家、失言まみれで信頼が全く置けなくなっている「重鎮」がいまだに多くの団体に名ばかりの「代表」とか「理事」という名前で君臨し、影響力を保持している。

 

無くならないサービス残業

 

なんとなく元気が出ないサラリーマン

 

こんなことは、だれもがわかっていながら変えられない、社会に残り続ける「黒い部分」なのではないでしょうか。

 

こういうものは本来、時間をかけたって一定程度は存在し、法律もすべてをがんじがらめにしてはそれこそ経済を止めてしまうことが分かっているために、抜け穴やグレーゾーンを用意しているものです。

 

抜け穴やグレーゾーンがあると言うことは、そこを突いて微妙なことをする人がいるし、それを黒か白か判断することに多大な労力が必要ということです。

 

今の日本の国会は、それを黒なのか白なのか判断する、一般市民の立場から明らかにしようとすることを民主主義の根幹であるとして、多大な時間を割いています。

 

対して、そんなことはしょうがないじゃん、自分はがんばろう、と考えているのが中国社会です。

 

ここに気が付かない限り、日本ビジネスマンが中国社会で成功することは難しいと言えるのではないでしょうか。

 

悪いことをしろとは言いませんが、悪いことがどこまで許容される社会なのか、そもそも自分の周りの競争相手がどこまでの前提でビジネスを行っているのか、どんなルールの下でビジネスを行っているのか、そこをはき違えてしまうと、絶対に勝てないのではないでしょうか。