アメリカとの会談ー中国内では内容の無い印象操作ばかりー
中国で駐在5年目のカンクローです。
アメリカと中国の外交トップ同士ががアラスカで会談したニュースは、中国でもテレビやネットニュースで取り上げられています。
私は普段、日本のテレビ番組でニュースを見ているので、どんな会談だったかは日本側の報道で知っていますが、中国人にとっての今回のアメリカとの会談の様子というのは、もちろん、中国政府が認めたテレビ局、新聞、ネットメディアのみで、中国政府の許可を得られるよう切り取った部分しか知ることができないものです。
重要なのはアメリカに強気で発言する様子
中国では、国内における国民向けの報道は、一種類しかありません。
アメリカの視点や、国際社会からの視点なんていうものはどうでもいいわけで、この「外交当局同士が会談した」というニュースを国民にどう伝えるかは、中国政府にとって「俺たち共産党は、アメリカに対してもこんなに堂々としてるんだぜ!」ということをアピールする機会に過ぎないような印象です。
具体的に言うと、アメリカがまず中国に何を言ったのか、何について懸念を表明したのか、そんなことは基本的に報道されず、中国側の代表である楊潔チという方と、王毅という方が「あなたたちに言われる筋合いは無い!」とか「アメリカは基準では無い!」とか「中国には中国式の民主主義があり、アメリカの民主主義とは異なる!」などというシーンのみが切り取られて何度も放送されています。
私は中国本家版のTikTokをよく見るのですが、こんな感じに、20秒ほどの楊潔チの発言シーンのTikTok動画は、泣く子も黙る脅威の「1,000万いいね」を獲得しています。
視聴数じゃなく、いいねが1,000万ですからね。中国国民は14億いるとして、そのうち半数がTikTok使ってても、7億くらいの母数があるとすると、1,000万いいねなんて大したことないとも言えるのかもしれませんが、怪しい数字だなあーって思います。
検索しても無駄ー検索エンジン上にも情報は存在しないー
グーグルが使えない中国では、中国人が使うのは「百度」と書いて「バイドゥ」と読む検索エンジンです。
見た目や機能はグーグルそっくりですが、出てくる情報は中国国内で許可された物だけです。海外のメディアが発信するニュースなどは、基本的に出てきません。
今回のアメリカとの対話について、例えば「アメリカは中国に対して何を言った」とか「アメリカの要求」なんていうキーワードで検索をかけてみても、今トップニュースであるはずの会談は表示されず、2、3年前の貿易戦争だとか、トランプ大統領が、などという的外れなニュースばかりが表示されます。
アメリカ側が最初に提起した「香港、台湾、新疆」などのワードは、物陰に隠れるように見えづらくなっており、中国がアメリカに対して強気に喋っているところだけが報道されるため、どうしてそういうやりとりになったのか、ということが全くわからない、ニュースとして全く内容の無いものになっています。
アメリカは利用されただけのように見える
日本の報道や専門家の分析でもありましたが、中国の突然のマシンガントークに対し、アメリカは意表を突かれた形でしょう。
アメリカ側がドギマギしている様子は、中国としても、(共産党にとっての中国国民に対する)いいアピール材料です。そういうところだけが切り取られ、結果として中国国民に「強い中国」という自信がどんどん醸成されていくのだと思います。
専門ではありませんが、まあ、中国ではこんな感じですよ、ということをお伝えできたらなと思いました。