中国人の給料について真剣に考察してみる(その3)
中国広州で駐在3年目のカンクローです。
中国の普通のサラリーマンの給料について、2回に渡って書いてきました。彼らがどれだけ困難な状況に置かれているか、今日本でも流行っている(?)「Tik Tok」(現地版)に面白いムービーが投稿されていたので紹介したいと思います。
動画は20代後半くらいの若者が論を展開する形で、1分間ほどつらつらと言葉を発するだけの構成になっています。発言の内容はこんな感じ。
ここから↓
大部分の(中国の)人々の月給は5000元(78000円)である。
そこから各種保険等の天引きが1200元、手元に残るのは3800元である。
かなり控えめなアパートに住んだとして、家賃は月々800元。残りは3000元。
(電気・ガス代、通信費等の)生活費で約400元。残りは2600元。
毎日の食事代、朝食5元、昼食・夕食を(かなり控えめに)各15元、1日に35元。これはかなり良心的な価格ですよね。30日で約1000元。残りは1600元。
生活必需品、衣服や靴、カバンなど、月平均400元。残りは1200元。
友達と1回食事や行楽施設に行けば数百元。お祝い事やプレゼントなどもあるだろう。こんなことが仮に月3~5回ほどだったとして1000元。残るは200元である。
毎月この200元(約3000円)を貯金したとして、一年に溜まるのは2400元。
理想の結婚相手にアプローチするには家や車を持ってないといけません。
一般的な住宅を、内装手入れも含めて130万元(約2000万円)、自家用車を20万元(約300万円)とすると、計2300万円の資産が無いといけません。
ここで一つの問題にぶち当たることがわかります。
150万元割る2400元ですから、約625年かかるわけです。
つまり、中国が明の時代、永楽帝の頃(約625年前)に仕事を始めた一般サラリーマンが、2018年の今年、やっと家や車を買って、大好きな彼女に結婚を申し込めるわけです。
↑ここまで
「家」と「車」に対する執着
中国では、若者が結婚する前に(一般的には男性側が)マイホームやマイカーを持っているべき、という古臭い資産信仰が根強いです。都市部の20代でも、80%くらいは家や車に拘ります。彼らの親の世代は、さらにそれらを子供たちの結婚相手に要求します。
ニュースでも見たことがある方もいるかもしれませんが、中国国内の不動産価格は、中国人の一般サラリーマン家庭に手の届く金額ではありません。各種の優遇を受けられる公務員や国有企業従業員、もともと都市部に家を持っていて、それを売ることで莫大な利益を得た成金地元住民、外資系企業社員、巨大企業の幹部クラスなどでないと、とても家を買えない状況を示すのが、上の皮肉なのです。
ちょっとした考察
かなり雑な計算だとしても600年かからないと家が買えないというのはどういう神経の社会なのか、理解に苦しむでしょう。
給料5000元というのがどれくらいの人々なのか、というのは過去の記事に書きました。
また、思うに「保険で1200」というのは言い過ぎのような気もします。せいぜい5000元の所得にだったら、500程度ではないかな、と。まあ、これは職場によるんでしょうが。
また、大体の家は30%の頭金で購入した後、ローンを組めます。そう考えれば、初期投資の負担は50万元程度ということになると思います。ただ、ローンを返し続ける年月として、上記の時間が残るわけですね。
ただ、月々の家賃800元、食事一日35元というのは相当切り詰めています。健康的な生活ではないです。
それでも、600年が300年とか100年になったところで、この悲壮感はどこに向かうんでしょうね。かわいそうな社会です。
さらに、中国の不動産(詳しくは土地自体)は、70年間の期限付きで上記のような価格設定になっています。家を買って、何十年のローンを払い終えたところで、計70年しか、その家は使えないわけです。
Tik Tok
ちなみに、「Tik Tok」は中国北京の会社が開発した短編動画投稿アプリです。中国では「抖音(ドウイン)」という名前です。直訳すると「振動音」とか「ぶるぶる震える音」とかいう意味です。
インターネットが厳格に規制されている中国では、アプリに表示される動画や各種コンテンツも、国外から厳格に分断されています。日本でダウンロードできる「Tik Tok」には、中国の「抖音」にアップロードされている中国人たちのムービーは表示されません。逆に、中国の「抖音」に日本の「Tik Tok」動画が出てくることは無いのです。